よろず屋小隊

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面白すぎるぞ『窓から逃げた100歳老人』

大学のサークルで知り合った男に紹介されて以来、私は新宿のとあるサロンに時々通わせていただいている。有名百貨店の小さな一角にあるそのお店は、土日にもなると日本全国からやってくる多種多様な顔で賑わっている。そこのマスターが太鼓判を押された小説が『窓から逃げた100歳老人』だ。

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正直、最近ここまで面白い小説にお目にかかった記憶がない。舞台は現代のスウェーデン。100歳の誕生日を迎えた主人公、アランが老人ホームを脱走し、偶然持ち逃げしたスーツケースに入っていた大金を巡る事件に巻き込まれていくだけでも面白いのに、アランの波乱万丈の生涯が随所に挿入される。若き日のアランは爆発物のスペシャリストとして、スペイン内戦でフランコ将軍の命を救ったと思えば、アメリカで原爆開発に貢献してトルーマンと酒を飲み交わし、国民党を支援すべく特命を帯びて宋美麗と中国に渡り、何故かスターリンと会食し、金日成毛沢東に会ったと思えば、ドゴールとジョンソンの会談に顔を出したりする。20世紀の歴史の随所に現れるアランの奇想天外な冒険が、一切の矛盾なく展開するのだ。

次はどこに行くのか、誰が出てくるのか、どう過去の冒険が繋がってくるのか、読みながら楽しみで仕方なくなること請け合いである。「人生、何とかなるさ」とマイペースに生きる主人公たちの姿を前に、日ごろの悩みなど吹き飛んでしまう。ヘンテコな100歳老人の、ある種ホラ話に等しい冒険が、ウィットに富んだ文体で綴られる至福の400ページ。オリジナルはスウェーデン語だが、英語版からベテランの柳瀬尚紀が絶妙な翻訳を行っている。

 

スウェーデンで映画化され、大ヒットを記録し日本でも『100歳の華麗なる冒険』として公開されている。早く観ねば。